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東京ビエンナーレ2021作品巡り(4)

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これまで、東京ビエンナーレで見に行った作品を3記事に分けて紹介してきましたが、最後は総まとめとして全体の感想などを書いていこうかと思います。

見てきた作品一覧

その前に、まだ個別の作品についてご覧でない方は以下のリンクからどうぞ。

秋葉原・神田エリア

上野・水道橋・湯島エリア(+東向島)

丸の内・日本橋・銀座エリア

総評(全体的な感想)

第一印象としては、残念ながらとにかくディレクションが悪い、に尽きるかと。

展示会の理念や目標、それを東京の街や人と作り上げるための計画も進めてきたとは思うのですが、鑑賞した中ではあまり伝わりませんでした。所々いい作品もあったのですが、アートと呼ぶには(個人的に)疑問を感じるものもありましたし、運営の情報発信については尚のこと問題があったと言わざるを得ません。

今回の展示で何が問題だったのか、(勝手ながら)分析してみました。

展示システムの複雑さ

まずは展示日程や場所の複雑さが問題でした。具体的には以下の点がわかりづらかったかと。

  • 出展内容が分かりづらい(特に複数作品やワークショップ等がある場合)
  • 一部の展示場所が見つけづらい
  • 休日を含めた展示時期がまとまってない

「いろいろな作品」が「東京の様々な場所」で鑑賞できるといえば聞こえは良いですが、裏を返せば展示作品が分散しているわけです。その為、このイベントでもエリアを区分して各作品の展示場所を分かりやすくした、はずだったのですが、展示時期もバラバラなせいで何がいつ展示されているか把握しづらいという致命的な問題が発生してしまいました。その上、作家によっては複数個所で展示していたり、日程が未定だったりして余計に複雑でした。

とにかく、以下の点は直しておくべきではないでしょうか。

  • 事前に全作品の日程・場所を確定しておく
  • 全作品の展示時期を統一する(ワークショップなど単発のものは展示期間内)
  • 作家ごとに展示場所を一つに絞る
  • 展示場所はあまり離れすぎない(歩いて1~2時間の範囲)

(9/8追記)
展示スケジュールのほかに、有料チケットについても問題を感じてました。

種類は個別の鑑賞券と全ての有料展示が見られる(と称する)パスポートの2種類ありますが、特に問題なのは後者の方。(前の投稿でも触れましたが)東京ビエンナーレの運営自体にきな臭さを感じ始めた原因の一つです。有料なのは構わないのですが、全てと称しておきながら会期直後(もしかしたら前?)に満員で予約できない展示があるというのはいかがなものかと感じ、購入を止めました。

1回のステージにおける客員数や公演日数などから動員できる総数はおよそ計算できるはずです。
確かに新型コロナの感染拡大という事情もありますが、それを鑑みてもなお厳しいものがあると思います。特に、2020年の予定を1年延期しての開催であれば準備や修正期間はあったはず。

そもそも、絵画や彫刻などの展示と演劇やダンスといったパフォーマンスは性質上、展示(公演)時間やスパン、日数が大きく異なるはず(後者は人が演じる以上、短くならざるを得ない)。それを、さすがに購入者全員が一律で鑑賞可能というのはどう考えてもほぼ不可能ではないかと。公演が何かの展示に付随しているのであればまだしも、あれだけ離れた場所の展示も公演も全て鑑賞というのは果たして可能なのか問いただしたい。
ましてやスケジュールすらバラバラなので、これは新手のパズルなのか、謎解きなのか、とすら思いました。謎解きアート散歩

結局、あれだけ場所も会期も展示の性質もバラバラなものを全て鑑賞というのが土台無理な話だったと思うので、展示とパフォーマンスのチケットは分けた方が良かったのではないかと思う次第です。そういえば、AR展示もほぼ有料だったな!あれ、見られない人結構いたけど

チケットに関して思うところは、大体こんなところ

  • 絵画や彫刻などの作品展示は、現状のパスポート(or個別鑑賞券)形式でもよい
  • 演劇などパフォーマンスは個別鑑賞券のみ
  • ARは…そもそも有料にすべきだったの?

ただ、こういうのは気にしたら負けなのかもしれない…。
クラウドファンディングで5万や10万円を支援した人や、一つだけの鑑賞でも気兼ねなく購入できる人が本当に真髄を味わえた…のかどうかは分からない。まあ、無料で結構見させてもらったけど。その上で辛辣に書いてるけども。

情報へのアクセシビリティ・UIが悪い

公式サイトを閲覧していくと分かると思いますが、鑑賞に必要な情報がとにかく見つかりません
なまじ見た目が整ってみえるので、余計に情報の探しづらさが目立つ結果に。

Tokyo Biennale 2020/2021
東京ビエンナーレは、東京・北東エリアを舞台に展開する国際芸術祭です。第1回目(2021年夏)は、「⾒なれぬ景⾊へ ―純粋×切実×逸脱―」をテーマに、国内外から60組以上の作家やクリエイターたちが参加します。

また、個別ページに記載はあるものの、全体の展示スケジュールがpdfファイルでしか見られないのも残念でした。
結局、どこかでもらった公式ガイド(紙面版)の裏面にあるイベントカレンダーで日程と作品を見比べて印をつけるのが一番手っ取り早かった。

Webサイトで主に修正してほしいのは以下の通り。何気に、作品番号がついているのに一覧表示で番号順ではないのがとても気になりました。

  • 全体の展示スケジュール(作品ごとに異なる場合)
  • 日付や場所から観賞できる作品の検索機能
  • 表示メニューを最小限に絞る
  • 作品の一覧表示での順番(作品番号順に統一)

情報発信・更新の遅さ

情報のアクセシビリティにも関係しますが、情報発信や更新が遅いのも問題です。
作品の時期や場所が変更になっても公式からSNS含めてなかなか発信がないので、展示情報が間違ったままになっていたり、作品を見逃すことに繋がるのが残念です。私たちも見事罠にはまったりしたので、情報更新の速度・頻度はもう少し改善してほしいところ。

コンセプトと展示内容の乖離

これはそもそもの話になってしまうけど、「アート×コミュニティ×産業」をキーワードに立ち上げたコンセプトと展示内容のちぐはぐ感が否めなかったなと。

近年では社会問題を解消するために考えられた作品やアート活動も増えており、アートによる地域振興というコンセプト自体は悪くないと思うのですが、いかんせんアート展示としてもコミュニティ・産業創出としても中途半端だったように思えます。様々なコンセプトやジャンルの作品が散発的に混在した形で展示されていった結果、美術展としての核がどこにあるのか分からないというのが正直な感想です。あと、単なるフィールドワークの調査報告はアート「作品」として含まれるのか、というのは微妙なラインではあります。

また、AR作品への着目もよいのですが、少し目玉として押し出しすぎかなとも思いました。
そもそもAR自体も単なる技術でしかないですし、真新しさという点では少し弱い部分もあります。しかも、非対応の端末やネット環境に大きく左右されるといった技術的な問題も出てきており、厳しい結果になったと思います(私たちも屋外では体験できませんでした)。
新しい端末買えって?それを言っちゃあ、おしまいよ。

もしコンセプトを実践するために、改善案を出すならこんなところかと考えます。

  • イベントが目指す理念・目標を明確に打ち出す
  • 作品展示とコミュニティ・産業創出は別プロジェクトとして扱う
  • 展示エリアごとでコンセプトをまとめる

あと、真夏に散歩させるのはやめたほうがいいです。灼熱散歩は正直きつい。

運営体制など

運営予算の詳細は分かりませんが、公式サポーター一覧には文化庁/独立行政法人日本芸術文化振興会「令和3年度日本博イノベーション型プロジェクト」というものがあり、採択金額が2850万円とありましたので、全体の予算もおよそ同額かと考えられます(補助金外の収入が半分を超えると、補助金が減らされるため)。

Japan Cultural Expo - Nihonhaku - | Exploring Arts of Japan from Antiquity to the Present
Based on the theme of Humanity and Nature in Japan, the Japan Cultural Expo - Nihonhaku- introduces 10,000 years of the arts, covering fine arts and cultural as...

予算が出るのはその半額で、残りはクラウドファンディングや別の協賛企業で賄っていると考えられますが、そもそも3000万円弱の予算で足りたのかというのは、公式マップなどの配布物やWebサイト・SNS運営、(個人的な印象ですが)ボランティア頼みの運用などを考えるといささか疑問が残ります。

というか、ディレクター多すぎない?
もしかすると今のアートイベント運営にはこれ位の数は必要なのかもしれませんが。

(9/8追記)
なんか会期内での展示が中止になった作品がありますが、展示会場の老朽化ってもっと早く気付くべきだったのでは?崩落などでの事故が起きるよりはマシですが、1年延期したのに開幕直前で安全性の問題が判明して、会期中に安全確認が取れずに断念とはこれいかに。

陸前高田2011-2020 – Tokyo Biennale 2020/2021
畠山直哉「陸前高田2011-2020」は、展示会場に老朽化による構造の劣化が開幕直前になって確認され、剥落等の懸念が生じ、作品の設置・公開を見送っておりました。8月23日現在まで、管理団体による調査が進められていますが、当芸術祭閉幕までに安全確認がとれない見通しとなったため、誠に申し訳ありませんが、9/5まで(会期内)...

文章がかなり長くなってしまいましたが、次回はより良い展示になっているといいなと思ってます。
とりあえず、どの作品がいつどこで鑑賞できるかすぐわかるようにはなってほしい。

おまけ

実は、紙面版の公式マップの表紙はARマーカーになっています。
サイトの+EXページにあるAR三兄弟の作品は無料で体験でき、特定のURLをアクセスするとカメラがONになるので対応するページを移すとCGモデルが出現します。
なお、読み込みに相当時間がかかりますので、気長に待ちましょう(固定回線推奨)。

東京ビエンナーレ +EX
東京ビエンナーレ2020/2021のパスポートをお持ちの方が、スマートフォンをかざすと、 AR作品や、東京の文化、歴史、作品の文脈を語るストーリーテラーたちが現れます。EXは、Experience(=体験)であり、Extra(=特別)です。現実の世界の作品たちや場所と、この 「+EX」がどう響き合うか、ぜひお楽しみくだ...
力士のダンス
オールスター総出演
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