気づけばもう9月。今年も残り4か月となりました。
7月から始まった東京ビエンナーレというアートイベントを見回ってきたので、記録もかねて訪問した場所を少しずつ紹介していきたいと思います。なんやかんや思うところがあり、少し辛辣気味かも(理由は別記事で)。
今回のエリアは、主に秋葉原と神田です。
- 東京ビエンナーレって?
- 鑑賞した作品(秋葉原)
- 門馬美喜 「千年前の地を走る馬」
- 西尾美也「着がえる家」
- 立花文穂 「球体9『機会 OPPORTUNITIES』」
- BKY+銭湯山車巡行部 「令和三年度 銭湯山車巡行」
- Tokyo Biennale 2020 SOCIAL DIVE Artist-in Residence Projects 映像展示
- 藤浩志 「kaekko Expo.」
- 2.5 architects 森藤文華 + 葛沁芸「青海三丁目 地先の肖像」
- グランドレベル (田中元子+大西正紀) 「TOKYO BENCH PROJECT 2019-2021」
- 見なれぬ”東京の地図”へ
- 藤原佳恵 「「抱っこ紐に次男、ベビーカーに長男」では 無理ゲー なダンジョンの攻略方法」
- 鈴木真梧「スイート・デモクラシー」
- 栗原良彰「大きい小さい人」
- 西原珉「トナリ」
- 災害対応力向上プロジェクト 「いつものもしも、神田五軒町・市ヶ谷エリア」
- 鑑賞した作品(神田)
- おまけ
東京ビエンナーレって?
東京を舞台に様々なパブリックアートを展示する芸術祭。
1952年から上野で開催された「日本国際美術展(東京ビエンナーレ)」の精神を汲み、今年から新たに始まった国際的な芸術祭で、ビエンナーレの名の通り2年に1度開催されます。当初は2020年に開催予定だったのが、新型コロナの影響で今年に延期となったそうです。
東京を舞台にすると言うだけあって、単一の美術館ではなく、区をまたいでいろいろな場所に作品が展示されています。無料公開から専用のパスを購入する有料のものもあり、ジャンルも絵や写真、彫刻からインスタレーション、さらにはAR作品まで様々な種類があります。
では早速、作品を見ていきましょう。
鑑賞した作品(秋葉原)
門馬美喜 「千年前の地を走る馬」
現代の騎馬を取材して水墨画の技法で描かれた作品。作品紹介では平将門公に関しても書かれていましたが、除災厄除の神様として奉祀されている神田明神はまさにうってつけの場所だったと思います。馬の躍動感が如実に描画されていました。
西尾美也「着がえる家」
かつて古着や既製服などを取り扱っていた海老原商店での住み込み型プロジェクト。柳森神社の近く。今のアップサイクルにも通ずる旧作の展示と、洗濯や古着の作り変えといったワークショップを実施しています。古民家で行うアートインレジデンスとも言えるかも。
個人的に好きなのは、家の中が吹き抜け構造だったこと。100年以上前からある建物ですが、当時はこんな構造も珍しくなかったのでしょうか。上から見たらどんな景色なのかは気になるところ。
立花文穂 「球体9『機会 OPPORTUNITIES』」
自主刊行の雑誌「球体」の最新号を制作しつつ、高架下という環境を活かして電車の通過する音と印刷機の稼働音をミックスしてスピーカーから流す実験的なインスタレーション。ライブペインティングという感じもします。
ただ、予約をし忘れてたので印刷機の写真しか撮れませんでした。
BKY+銭湯山車巡行部 「令和三年度 銭湯山車巡行」
「今はなき銭湯を弔い、今を生きる銭湯を寿ぐ、銭湯のための祭りを。」
銭湯で使われた物品で製作された山車で東京を巡行するという企画の一環で、秋葉原のUDX2階の隅に照明もついてない中でポツンと展示されてました(時間が遅かったので)。
トークや巡行イベントなど他の企画もあったようですが、予定が合わなかったり分からなかったりで一切行ってません。
Tokyo Biennale 2020 SOCIAL DIVE Artist-in Residence Projects 映像展示
東京ビエンナーレ2020/2021とアーツ千代田3331で取り組むアーティスト・イン・レジデンスプログラム。公募選出された海外アーティストが来日する予定でしたが、新型コロナで断念となり、映像上映となりました。
藤浩志 「kaekko Expo.」
不要となったおもちゃ類を活用する子供主体のコミュニケーションプログラムを提案・運営してきた作者の活動紹介と空間展示。メイン会場はアーツ千代田3331ですが、ノーガホテルなどでも作品の一部が展示されていました。なお、メイン会場は有料パスが必要でした。
2.5 architects 森藤文華 + 葛沁芸「青海三丁目 地先の肖像」
埋立地及び資源やゴミに焦点をあてたフィールドワーク/体験型インスタレーションを通じて臨海の埋立地について考えるプロジェクト。2k540で展示されています。
グランドレベル (田中元子+大西正紀) 「TOKYO BENCH PROJECT 2019-2021」
パブリックスペースにベンチを設置して、東京の風景を一変させる試み。ランドスケープデザインの一環とも言えます。メインは丸の内仲通りですが、アーツ千代田3331にも設置されています。通常の2倍サイズのベンチが設置されていて、巨人専用かなと思いました(2倍サイズのは現在、別作品に置き換え)。
まあ、この日は暑すぎて座ってなんかいられませんでしたが。
見なれぬ”東京の地図”へ
大学のスチューデントプログラムとして、高低差を反映した立体地図に歴史や主観を織り交ぜてマッピングするフィールドワーク。アーツ千代田3331の1階の売店すぐそば。とりあえず、フィールドワークお疲れさまでした。
藤原佳恵 「「抱っこ紐に次男、ベビーカーに長男」では 無理ゲー なダンジョンの攻略方法」
作者自身の子育てに関する実体験に基づいたメタ的なアート。アーツ千代田3331では、動画や調査報告がピクセルアートと一緒にインスタレーション形式で展示されていました。遭遇した困難などをRPG風に例えています。
ちなみに、調査報告書と称するアンケート結果も公開されています。
「抱っこ紐に次男、ベビーカーに長男」では無理ゲーなダンジョンの攻略方法に関わる調査報告書
鈴木真梧「スイート・デモクラシー」
もともとは選挙権が与えられる年齢である18歳の半分、9歳以上の小学生に際して作者が実施してきた選挙の疑似体験プロジェクト。この展示ではプロジェクトの経過や活動実績が紹介されています。角砂糖で国会議事堂を模したモデルを作り、蟻が食べていく様子を可視化した「蟻事堂」も並行して展示されていました。
栗原良彰「大きい小さい人」
環境問題、特に「夏の暑さ」に正面から取り組んだインスタレーション作品。メイン会場は最近できたばかりのTOKYO Torch Parkですが、7月末からアーツ千代田3331にも展示されています。
気化熱を利用して周囲を冷却する「涼しい彫刻作品」だそうですが、水が掛かってなかったからか、よく分かりませんでした。というか、日本の夏が暑すぎた。
あと、同じ作家の「PURE LIFE」という作品も展示されていました。
面白いのが、公式サイトでPURE LIFE自体の作品ページはなく、「大きい小さい人」のページで「その他」の欄にちょろっと紹介されているだけなんですね。結局、単独なのか連作か、関連性がよくわからん。
西原珉「トナリ」
アートセラピーやソーシャル・ワークとしての視点から解説されたフリースペース。カウンセリングやワークショップも開催されていたそう。立ち寄ってたら作品制作のヒントとかもらえたのかな。
災害対応力向上プロジェクト 「いつものもしも、神田五軒町・市ヶ谷エリア」
アートやデザインの手法で東京の災害対応力向上を目指す社会プロジェクト。会場は2か所あり、そのうちアーツ千代田3331向かいの長谷川ビルに行きました。ちなみにイベントのインフォメーション受付も兼ねてます。
被災地で培った経験知と住民のリアルな声を反映した防災マップをはじめ、災害対策用のグッズ紹介やワークショップも実施されました。
一番の目玉は給水機!マイボトルの持参をお勧めします。
特に作品巡りをしていた時期は猛暑だったので、とても助かりました(とはいっても、今週は曇りが続くのであまり必要なさそうですが…)。
鑑賞した作品(神田)
中村政人「優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ」
第二次世界大戦後に神田で開業した額縁屋「優美堂」を建築改修や事業の運営、展示会を通じて再生する社会プロジェクト。 優美堂自体を作品にする社会実験とも言えそう。再開発の波が押し寄せる街で、いかに古くからある建物を残していけるかという背景があるみたいです。
お金を払えば「富士山」の裏側もみられるらしい。
額縁屋だったこともあり、2階には様々な額縁が絵と一緒に飾られていました。なお、3階は有料パスが必要だったので行ってません。
ここの目玉スポットは、実際に使われていた防空壕に入れること。真夏にも関わらず、中は少し涼しさを感じましたが、それ以上に暗くて天井も低かったです。10人くらいは入れる広さだと思いましたが、薄暗く人が密集する空間で空襲を耐え忍ぶのはどんな気持ちだったのかと思いを馳せていました。
中村政人「私たちは、顔のYシャツ」
上と同じ作家の別作品。1920年に創業したオーダーワイシャツの専門店「顔のYシャツ」のアーカイブ化による保存の試み。実は、こんな目立つ看板があるとは今回の展示会があるまで知りませんでした。案外気が付かないものですね。
中は黄色いボールであふれていますが、これは建物内のいろんな場所に書いてある質問にボールという形で答える体験型の展示だからです。穴に入れたり、木枠のレールに置いたりと、いろいろな工夫が施されています。
ピッチングマシーンでボールを飛ばすという仕掛けも。古民家で遊んだらこんな感じなのかな。
あと、終わった後の片づけとか大変そうだなー、と思いました。
(9/10 追記)
そういえば、ビエンナーレについての持論をまとめた本もあるんですね。へー。
Hogalee「In the CBD」
公募アートプロジェクト「ソーシャルダイブ」選出作品。地域のランドマークとして機能するパブリックアートを目指した平面作品だそうです。大手町にも別作品がありますが、神田の方は「Landmark Art Girl」という作品が展示されています。
おまけ
このイベントではパスを購入しないと見られない作品もあり、当初は購入も検討していましたが、すでに予約がいっぱいで購入しても見られない作品があって見送りました。なので、以下で取り上げるのは立ち寄ったけど作品鑑賞はできていない場所です。見てないので紹介も特にありません(できません)。
あと、東京ビエンナーレとは関係ないのですが、アーツ千代田3331でこんな作品も発見。
次の記事では、湯島と水道橋と上野(+東向島)を紹介する予定です。
(↓更新しました)