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VR Readyな小型デスクトップPCを自作してみた話(前編)

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あっという間に2か月くらい過ぎてしまった…。
このところ全然更新できてなかったのですが、久しぶりに技術ネタでも投稿してみようかと。今回は、VR Readyな小型PCを自作してみたお話です。

VR対応の小型PC(初代)

きっかけ

VR対応の小型PCを自作したきっかけは、ゲーミングPCブランドのG-Tuneで出されたVR対応の薄型デスクトップPCに魅力を感じたからです。

幅22ミリでVR対応!? 驚きのゲーミングデスクトップPC最速フォトレビュー - 週刊アスキー
ノートPCよりも薄く・高性能なゲーミングデスクトップPC「NEXTGEAR-SLIM」爆誕! 早速見せてもらったので、写真で分かる範囲の利点をご紹介。

これ自体は販売期間が終わって購入できなかったのですが、「これって自作できないか」と考えてVR対応の小型PCの自作に挑戦することにしました(そして自作PC沼へ…)。

小型化のメリット・デメリット

VRが動くPCとなると相当なスペックが要求されるものですが、かといって筐体が大きいと家の中での置き場所に困ったりします。しかも、制作したVRゲームやコンテンツを展示するとなれば、会場への搬送、持ち運びにも一苦労というもの。最近ではVRも動かせるノートパソコンもあったりしますが、性能から考えるとデスクトップよりコスト増になる上に、画面やキーボードなどが故障すればすぐ使えなくなります。

小型デスクトップであれば上記の問題が解消でき、開発と展示の両方をこれ1台でこなせます。ただし、自作PCのメリットである拡張性は少なく、特にHDD/SSDの増設やメモリの追加といった搭載するパーツを増やす拡張はほぼ不可能です。また、サイズが制限されるので使えるパーツの種類が限られる、選べる部品が少なく費用が高くつきやすい、筐体が小さく組み立ての難易度が上がるといった欠点もあります。また、エアフローが悪くなるので排熱が難しい傾向があります。

  • メリット
    • 小さいので置き場所に困らない
    • 軽くて持ち運びが楽
    • ディスプレイやマウス・キーボードなどの周辺機器が交換可能(ノートパソコンとの比較)
  • デメリット
    • 拡張性が少ない(パーツ増設はほぼ不可)
    • PCパーツの制限(サイズや規格、性能など)
    • 費用が高くつきやすい
    • 組み立ての難易度が高い
    • エアフローが悪くなる(排熱が難しい)

PCパーツの制限については、ハイスペックなものがほぼ選べなくなるので、極限まで性能を追求したい人には向かないかと思います。
逆に発熱もある程度抑えられるので、よほど高負荷で動かし続けない限りは排熱もそこまで問題にもならない気がします。

VR用PC(初代)の自作

初代のVR用PCを自作したのはおよそ2年前です。
PC自作にあたって、まずは以下の条件を設定しました。

  1. VR Readyの要件を満たす
  2. 一般市販で流通している規格に沿う(特殊な規格や部品を使わない)
  3. 上記の条件1と2を満たした上で、なるべく小さい部品を選定

まず1.は当然として、2.も一般で流通している規格にすることで、個人で修理や交換ができるというメリットが生まれます。
小型のPCといえばベアボーン型のキットもありますが、特殊な部品が使われているのでサポートが終了すれば修理すら難しくなってしまいます。パーツ交換ができて、長く拡張やグレードアップが楽しめるのは自作PCのメリットですね。

とはいえ、PC自作が初めてだったので、選定はおろか自作の勝手もあまり知らずに苦労しました。
いろいろと調べてみると、Mini-ITXという規格で組めば小型PCが出来そうだとはわかりましたが、全体のサイズが小さくなるので、中に入る部品の大きさも限られます。
部品によっては小型のものが見つかりにくく、新たに部品の選択肢が限られるという問題が浮上します。

特に大変なのは以下の部品です。

  • PCケース
  • グラフィックボード(GPU)
  • CPUクーラー

PCケース

とにかく苦労したのがケース。GPUも搭載可能で且つ小型というケースは国内ではまずなく、海外からの取り寄せになります。
(秋葉原のTSUKUMOには、Lian LiのPC-Q21Aというケースがありますが、ファンの搭載はおろか通気口もほぼなく熱気が逃げにくい構造でお勧めできません)

有名なのは、ディラックのDAN A4-SFXです。その斬新さと完成度で、たちまちグラボの入る小型PCケースの火付け役になりました。
正面はスリムで奥行きが長いという特徴的な形で、コンパクトでありながら長さ30㎝までのグラフィックボードが入るので、グラボの選択肢が広がります。
ここ最近、グラボが入手しづらい状況にあるので、使えるグラボが多いことは大きなメリットだと思います。

ディラック DANCase 容量7.2Lのコンパクト筐体に295mmのグラフィックカードを搭載可能なMini-ITX用ケース A4-SFX v4.1 Black 日本正規代理店品 A4-SFX V4 BLACK

ですが、少しでも小さいケースがないかと探していました。
おかげでGEEEKのA30(当時はA31が出る前)やLazer3DのLZ7 STXといったケースも発見できたのですが、最終的にはCase-by-Case DesignのMI-6というケースにしました(現在は販売終了)。

https://www.casebycasedesign.com/

寸法135 x 203 x 246 (mm)で容量6.7LとDAN A4-SFXより小型で、少しざらざらのマット調に加工されたステンレス製のケースです。ただ、グラボの長さが190mmまでのため、DAN A4-SFXより選択肢が狭まってしまいます。グラボ重視の方は、DAN A4-SFXが良いかもしれません。

というわけで、ケースが決まれば自ずと他のパーツも決まります。
マザーボードはMini-ITX規格のものですが、CPU、メモリ、ストレージは標準的なATXでもMini-ITXでも同一です。特にストレージはM.2 SSDであればサイズも小さくなりますが、割高でヒートシンクが必要となります。
また、電源はSFX、大きさによってはFlex ATXという規格になりますが、SFX電源であれば様々な製品が出ているため割と選定しやすいかと思います。
ちなみに、電源は下の製品を選んでいます。

CORSAIR 600W SFX電源ユニット 80PLUS GOLD認証取得 1系統 SFシリーズ SF600

それでも難しいのが、グラフィックボードと電源です。

グラフィックボード(GPU)

選んだケースが190㎜以内の長さしか入らないため、ショート基板と呼ばれるものを選ぶ必要があります。

これがなかなか種類も少なく、割高になりがち、性能は抑え気味、ファンが大きくできず廃熱性能が少し低いといったデメリットもあります。ただ、性能はクロック数が上がるくらいなので、排熱性・静穏性・値段の3点が主な問題になるかと。

自分は値段の関係から、玄人志向のGTX1070ショート基板を中古で購入しましたが、近年ではビットマイニングなどで酷使した後に売り出されるケースも多いため非推奨です。もし選ぶ場合は、インターネットではなく大手PCショップで状態の良さそうなものを選んで購入するのがよいかと思います(責任は負えません)。幸いにも今回のは問題なく動作しており、今もバリバリ使っています。

申し訳ございませんが、お探しのページは見つかりませんでした。 | 玄人志向

CPUクーラー

とにかく高さを抑えなければならず、選べる商品がどうしても少なくなってしまいます。

冷却性能を上げるためにはサイズは大きくなってしまうため、ここで選ぶクーラーは省スペースと冷却性の両立したものが要求されますが、今回はこちらのクーラーを選びました。

サイズ ロープロファイル対応CPUクーラー CC-SHERO-01-B

不安であれば

ネットで確認するだけでは不安だと思うので、やはりショップの店員に伺うのが一番確実です。

ケースの大きさや要望から入る部品の選定や構成を丁寧に教えてくれるので、初心者でもパーツ選びの間違いはほぼなくなると思います(というより初心者こそ行くべきかも)。自分もほとんどのパーツをショップで聞いて購入しました。

スペックは?

こんな感じでパーツを選んだわけですが、構成をリストにまとめてみました。

  • CPU: Intel Core i5-8500
  • マザーボード:ROG STRIX B360-G GAMING
  • GPU:GF-GTX1070-E8GB/OC/SHORT
  • RAM:DDR4 16GB(8GB x 2)
  • SSD:SAMSUNG 970 EVO 250GB
  • 電源:CORSAIR SF600
  • ケース:MI-6 2nd Edition
  • ファン:NF-A9x14 PWM

総評としては、VR Readyの要件を満たして、かつなるべくコストを抑えるように頑張ったのですが、それでも18万円くらいは掛かったかと思います(とにかくケースが高い)。
ショップのセールを狙って購入すれば、もう少し安くできたかもしれません。また今なら、CPUはCore i5-9400F、GPUはGTX1660Tiにすれば更に費用が抑えられそうです。Core i5-9400FはオンボードGPUが非搭載ですが、グラボ搭載を前提にしているので何の問題もありません(が、新規で自作するなら更に世代が上のCPUを使ったほうがいいでしょう)。

(製作した2019年時点で)グラボはハイエンドクラスですが、CPUは標準的でコスパ抜群のものを選びました。
マザーボードはもとよりMini-ITXで拡張性は少ないので、オーバークロックやストレージ搭載数などの機能より高負荷時の耐久性を重視しています。
ストレージは読み書き重視でSSDの250GBを選定。最低限のシステムだけをインストールして、作成したVRゲームやコンテンツは外部ストレージで保存するという想定です。
電源は600WでGTX1070の推奨電源容量は余裕で超えていますし、品質もGold認証なので安定性も保証されています。何よりアイドル時はとても静かです。

肝心のVR性能ですが、Steamのパフォーマンステストを実施したところ、見事「VRレディ」の文字が!当初の目標は達成できました。

Steam Performance Testの結果

後半は2代目のパーツについて記載する予定です。
→ 後半の記事を更新しました(2021/4/29)。

(初代の組み立てについてはまた別記事で書こうかと)

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